「外注したのに、なぜか自分が一番動いている」
制作会社の方とお話ししていると、この言葉が本当によく出てきます。
コーダーさんにも、デザイナーさんにも頼んでいる。それぞれ、悪い仕事をするわけではない。
それなのに、指示を出すのは自分。進捗を確認するのも自分。遅れたときにクライアントへ最初に連絡するのも自分。
手は空かないまま、外注費だけが出ていく。
そんな制作会社のディレクター・経営者の方へ。
福岡でホームページ制作をしている Ndesign が、制作会社3社との継続取引と、これまで重ねてきた面談で実際に返ってきた反応をもとに、「制作会社が外注先に本当に求めているもの」をお伝えします。
読み終わる頃には、次に外注先を探すときに何を確認すればいいかが、はっきりしますよ。
求められているのは「制作スキル」ではなく、自分が動く量が減ること
制作会社の方から聞く困りごとを並べていくと、意外なほど「制作の品質」の話が出てきません。
代わりに出てくるのが、冒頭の言い方です。
外注に任せたのに、自分が一番動いている
ここで注目したいのは、「作業が減らない」ではなく「自分が動く量が減らない」と言われることです。
作業そのものは、外に出せています。コーディングもデザインも、手元から離れている。
それでも動く量が減らないのは、減っていないのが「手を動かす時間」ではなく、気にかけている時間だからです。
- 誰に何を頼んだかを、覚えておく
- 進んでいるかどうかを、こちらから確認する
- 上がってきたものを見て、これでいいか判断する
- 遅れそうなら、クライアントに先に伝える
この4つは、外注先が増えるほど増えていきます。
だから「安くて上手い人」を1人見つけても、ディレクターの負担は軽くなりません。管理する対象が1つ増えるぶん、かえって重くなることさえあります。
制作スキルが要らないという話ではありません。
ただ、スキルは足切りの条件であって、選ばれる理由にはなっていない。これが、受注側として制作会社さんと組んできて感じていることです。
面談で前のめりになった順番は、はっきり決まっていた
私は制作会社の方と初めてお話しするとき、できることを一通り並べるのをやめました。反応が薄かったからです。
代わりに、こちらから3つの提案をするようにしました。
すると、明確に前のめりになる順番がありました。何度お話ししても、この順番はほとんど変わりませんでした。
| 順番 | 提案した内容 | 相手の反応 |
|---|---|---|
| 1番目 | バラバラになっている外注の窓口を、一本化する | いちばん食いつきが強い |
| 2番目 | ディレクション・進行管理を代わりに引き受ける | 「そこまでやってもらえるんですか」と返ってくる |
| 3番目 | 公開後の運用・保守をまとめて巻き取る | すぐには決まらないが、後から相談が来る |
制作そのものの話は、この3つより後ろでした。
順番に見ていきます。
1. 窓口が1つになると、覚えておくことが減る
コーダー、デザイナー、ライター、それぞれ別の人に頼んでいると、連絡先も進み具合もバラバラになります。
チャットのウィンドウが3つ開いていて、それぞれ違う話が進んでいる。
1つが遅れると、後ろの2つも押す。誰にいつ何を渡したかは、頭の中にしかない。
窓口が1つになると、この「覚えておく作業」がなくなります。
反応がいちばん強いのが、ここでした。安くなるからではなく、考えることが減るから選ばれています。
2. ディレクションの代役は「判断まで持っていく」こと
2番目に効くのが、進行管理そのものを引き取ることです。
ここで言うディレクションの代役は、「進捗を報告します」ではありません。
報告が届くだけだと、結局その報告を読んで判断するのはディレクターです。仕事は減っていません。
減るのは、こういう形にしたときです。
- 問題が起きたことだけでなく、どうするかの案まで一緒に出す
- クライアントに確認が必要なことは、確認用の文面まで作って渡す
- 判断が要らないことは、報告だけして進めておく
「判断してください」と持っていくのではなく、判断できる状態にして持っていく。
このひと手間があるかどうかで、ディレクターの負担はまったく変わります。
3. 公開後を引き取ると、次の受注に手が回る
3番目は、公開したあとの運用・保守です。
これは、その場ですぐ決まることは少ない提案でした。すでに付き合いのある会社があったり、社内で対応していたりするからです。
ただ、後から相談が来やすいのがこの領域でもあります。
公開後の細かい修正依頼は、1件あたりは小さくても、途切れずに来ます。
その対応をしている間、新しい案件の提案書は進みません。ここを引き取ると、制作会社さんは営業と提案に時間を戻せます。
「何でもできます」が、いちばん響かない
できることを並べる提案が響かないのは、聞いている側に確かめる手段がないからです。
私は面談で、先にこうお伝えしています。
- ECサイトは対応できません
- 30ページを超えるような大規模な制作は、経験がありません
仕事を逃しそうな言い方に聞こえるかもしれません。
実際には、これを先に言うようにしてから、話が早くなりました。
理由は3つあります。
| 先に「できない」を言うと | 何が起きるか |
|---|---|
| 相手がその場で判断できる | 「何でもできます」だと、任せていいかを相手が自分で見極めるしかない |
| 「できます」の重みが増す | できないことを言う人が「これはできます」と言うから、その言葉が信用される |
| 後で揉めない | 引き受けてから「実はできません」となるのが、依頼する側にはいちばん困る |
サービスの説明も同じで、「これは得意」「ここは段階的に巻き取れる」「ここは確認します」と、段階で区切って伝えるようにしています。
境界がはっきりしているほうが、任せる側は動きやすいからです。
それでも見ておきたい、3つの基準
ここまでは「何を求められているか」の話でした。
外注先を選ぶ場面で見ておきたいことも、あわせてお伝えします。
基準1. 説明コストが低いか
ディレクターにとって、いちばん大きな負担は「伝える手間」です。
同じ内容を頼んでも、外注先によって必要な説明の量がまったく違います。
| 場面 | 説明コストが高い相手 | 説明コストが低い相手 |
|---|---|---|
| デザインの共有 | 余白や文字サイズまで、細かく指定しないと進まない | デザインの意図を読み取って形にできる |
| 修正の依頼 | 毎回スクリーンショットに印をつけて説明する | 文章の指示だけで、意図を汲み取れる |
| 追加の要望 | 仕様書がないと動けない | 「こういう方向で」で方向性をつかめる |
見極め方はシンプルで、最初のやり取りで、相手から質問が出てくるかを見ます。
「承知しました」だけで返ってくる相手より、「この部分は、クライアントさんの狙いはどちらですか」と聞いてくる相手のほうが、あとの説明が減ります。
基準2. 納期とコミュニケーションの安定感
納期を守れるかどうかは、1回の発注では見えません。
見えるのは、遅れそうなときにどう動くかです。
遅れること自体は起こります。問題になるのは、遅れの連絡が、こちらから聞いたあとに来るときです。
先に言ってもらえれば、クライアントへの調整ができます。後から知らされると、その調整ができません。
テスト発注をするなら、規模の小さい案件で、あえて途中で1つ仕様を変えてみるとわかりやすいです。変更が起きたときの返し方に、その相手の進め方が出ます。
基準3. 公開したあとまで対応できるか
制作だけを切り出して外に出すと、公開後の問い合わせは自社に戻ってきます。
「フォームから連絡が届かない」「検索してもホームページが出てこない」といった相談は、作った本人でないと原因を追いにくいものです。
検索エンジン最適化(SEO)やGoogle アナリティクス 4(GA4)の設定、セキュリティ対応まで見られる相手だと、この戻りが減ります。
費用の考え方については、こちらの記事でも書いています。
次に外注先と話すとき、確認したい3つの問い
ここまでの話を、そのまま質問の形にしておきます。
初回のやり取りで聞けるものばかりです。
問い1「これはできない、というものはありますか」
返ってくる答えより、答えられるかどうかを見ます。
「だいたい対応できます」で終わる相手は、境界を決めていないか、決めていても言わない相手です。どちらにしても、あとで確認する手間が発生します。
問い2「進捗は、こちらが聞く前に届きますか」
頻度を約束してもらう必要はありません。
聞きたいのは、報告が来る条件が決まっているかです。「週1回」でも「区切りごと」でも、条件がある相手は、こちらが催促する回数が減ります。
問い3「公開したあとは、どこまで見てもらえますか」
ここを最初に握っておくと、公開後に慌てずに済みます。
「制作まで」と言われても構いません。範囲がわかっていれば、その先を誰に頼むかを先に決められます。
フリーランスに頼む場合の相場や進め方は、こちらにまとめています。
外注先は、探すより育てるほうが早い
外注先を毎回探し直すのは、それ自体がディレクションの仕事になります。
候補を見つけて、実績を見て、見積もりを取って、テスト発注をして。ここまでで、案件が1つ動かせるくらいの時間がかかります。
私は今、制作会社3社と継続してお取引をしています。
どの会社も、最初はテスト発注の1案件からでした。お互いの進め方がわかってくると、説明が減り、確認が減り、任せられる範囲が広がっていきます。
1件目から全部を預ける必要はありません。小さく1案件出して、進め方が合うかどうかを見る。合えば、次から範囲を広げる。この形がいちばん失敗が少ないと感じています。
外注がうまくいかないときに共通して起きていることは、こちらでも整理しています。
よくある質問
- 今の外注先に不満はないのですが、窓口を変える意味はありますか
-
制作そのものに不満がないなら、無理に変える必要はありません。見直す価値があるのは、外注先が複数に分かれていて、その間をつなぐ作業をご自身がしている場合です。つなぐ作業がどれくらいあるかを一度書き出してみると、判断しやすくなります。
- まず1案件だけ試したいのですが、それでも受けてもらえますか
-
その形がいちばん多いです。継続でお取引している会社も、最初は1案件からでした。進め方が合うかどうかは、一緒にやってみないとわからない部分があります。
- 対応できない案件はありますか
-
ECサイトは対応していません。30ページを超えるような大規模な制作も、経験がないのでお受けしていません。この2つ以外なら、まずご相談ください。できることとできないことを、その場でお伝えします。
- クライアントとの打ち合わせに同席してもらうことはできますか
-
できます。スタッフの一人として同席することもできますし、名刺や呼び方も、そちらのルールに合わせます。
まとめ
制作会社が外注先に求めているものを、あらためて整理します。
- 求められているのは制作スキルそのものではなく、自分が動く量が減ること
- 面談で反応が強い順は、窓口の一本化、ディレクションの代役、公開後の巻き取り
- 「何でもできます」より、できないことを先に言うほうが信頼される
- 選ぶときは、説明コスト・遅れたときの動き方・公開後の範囲を見る
外注先を探すときに実績やポートフォリオを見るのは、もちろん大事です。
そのうえで、一緒に仕事をしたときに、自分の手が空くかどうか。ここを基準に置くと、長く組める相手が見つかりやすくなります。
Ndesign では、制作会社さんの「頼れるパートナー」として、制作から公開後の運用までお手伝いしています。
できないこともあるので、そこは最初にお伝えします。ECサイトと、30ページを超えるような大規模な制作は、お引き受けしていません。
外注の窓口、いくつに分かれていますか?
いきなり全部お任せください、とは言いません。
まずは1案件、小さく試すところから。
できることとできないことは、最初にはっきりお伝えします。



